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「富士山登山鉄道」2年後めどに構想

富士山の麓から五合目を結ぶ「富士山登山鉄道」計画が急浮上しています。同構想を選挙公約として当選した山梨県知事が、2年後をめどに構想案をまとめる考えを発表、6月末以降に有識者による検討会を設置し、環境への影響や経済効果などが検証されます。

「富士山登山鉄道」構想

富士五湖観光連盟 2015年「世界遺産 富士山の環境と観光のあり方検討会 報告書」より
富士五湖観光連盟 2015年「世界遺産 富士山の環境と観光のあり方検討会 報告書」より

富士五湖観光連盟により2015年にまとめられた「世界遺産 富士山の環境と観光のあり方検討会 報告書」によると、「富士山登山鉄道」構想は既存の有料道路「富士スバルライン」を改修して路面電車軌道を敷設することで、富士山の環境保全、噴火などの緊急事の大量輸送、軌道敷へ同時に上下水道を整備することなどが可能、さらに現在は通行止めとなる冬場の観光客増加を見込めるなど、多くのメリットがあるとされています。

富士五湖観光連盟 2015年「世界遺産 富士山の環境と観光のあり方検討会 報告書」より

富士五湖観光連盟 2015年「世界遺産 富士山の環境と観光のあり方検討会 報告書」より

一般車両はもちろん、路線バスや観光バスなども通行は出来なくなりますが、路面電車軌道とすることで緊急車両の通行は可能、道路幅内で複線化できるので新たにトンネルの掘削や道路の拡幅は不要であるため自然環境への影響が少なく、ロープウェイ、ケーブルカー、モノレール、LRTと比較して最も現実的である旨が提言されています(重量の関係から橋梁については架け替えが必要)。

但し、技術やコスト面での課題に加え、地元に否定的な意見もあるため、これまで具体的には検討されていませんでした。

「世界文化遺産」登録への影響

周知のとおり富士山は2013年に世界文化遺産に登録されていますが、認定された内容から大きく逸脱するような事態、開発が行われると登録を取り消されてしまうことがある、未来永劫に世界文化遺産であり続ける訳ではないことも周知のとおりで、富士山の環境保全と登山者の安全対策のため費用の一部を登山者から徴収する「富士山保全協力金」制度が平成25年から施行されています。

富士山五合目への登山鉄道の敷設は、かなり大掛かりな開発です。環境保全のための費用を来訪者から徴収しつつ、一方では鉄道の敷設、大規模開発するという矛盾を感じずにはいられないかも知れませんが、「富士山の環境と観光のあり方検討会 報告書」によると、現状の乗用車・バス利用と比べて排ガスなど環境面においては鉄道他が圧倒的に有利であること、既存の道路・富士スバルラインを路面軌道とするので、新たな開発は最小限であることなどから、「世界文化遺産」登録上での影響は無いとしています。

実現したら「運賃」は?

では、実現したとして実際の運賃はどれほどになるのでしょうか。気になるところです。

富士五湖観光連盟による富士山登山鉄道構想は、スイスの登山鉄道「ゴルナーグラート鉄道」を参考としているとの記載があります。

ゴルナーグラート鉄道 山頂付近
ゴルナーグラート鉄道 山頂付近

同鉄道はツェルマット(標高1,604m・富士山で例えると四合目あたり)と、スイス最高峰となるモンテローザや名峰マッターホルンを含むアルプスの絶景が目前に広がるゴルナーグラート山頂(標高3,089m・富士山で例えると八合目位)を結ぶ人気の登山鉄道で、延長9km、標高差1,485m。

運賃は片道47CHF(スイスフラン)。日本円にしておよそ5,100円!
但し、先述のとおり、標高3,089mの山頂まで行け、絶景を楽しめるのですから、1日のスイス・ツェルマット観光費用としては必要以上に高額では無いと思います。

一方、現状の富士スバルラインは山梨県・富士吉田I.C.から富士山五合目(標高2,305m)までの延長29.5km、標高差約1,200m。スイスの登山鉄道と比べて標高・標高差はやや小さいものの距離は3倍以上。さらに山梨県富士吉田I.C. までの市街地での軌道敷設も必要となります。

ちなみに現状、富士急行「富士山駅」または「河口湖駅」から富士山五合目(富士スバルライン五合目)までの路線バスは、往復で2,300円。乗用車の富士スバルライン通行料は普通車往復2,060円。

都市に住む人々の普通の感覚だとバス代と同額、またはいくら高くても倍はしないと想像するのですが、何分生活利用者は皆無で他に無い「観光地」です。大規模な開発費用を運賃収入で回収するとなると、お幾ら万円になるのやら…